当時、圧倒的なプログラム技術で、 メガＣＤでプレステ並のポリゴン背景を実現したシルフィードという ゲームがありました。 これを開発した宮路武氏は サターンのグランディア、メガＣＤのシルフィードと、 技術力を生かしたゲームを立て続けに出しました。 宮路氏は、非常に完成度の高いゲームをつくり続けましたが、 メディアの露出が低く。地味な存在でした。 当時は、飯野賢治氏や飯田和敏氏という、 話題づくりの天才というべき人が色々いたので、 ゲーム雑誌の紙面も自然に派手なクリエイターへの 取材が多い傾向にありました。 しかし、実力は本物でした。作られた作品をたまに遊ぶと、 作品に対してのコダワリが半端ではなかったことを 再認識できます。 テクスチャーマッピングを使わずに ポリゴンだけで模様を表現し メガＣＤでポリゴンの世界を実現してしまう。 当時、スーファミやメガドラでもポリゴンを 使ったゲームが出ていますが シルフィードはそれらのゲームの比ではない、 半端ない数のポリゴンがぐりぐり動いてます。 実際に数えたわけではないのですが、シルフィードは スーパー３２Ｘのゲームよりも多くのポリゴンを 使用していたのではないのではないでしょうか。 もちろん、リアルタイムで大量のポリゴンを処理する能力は メガＣＤにはないために、 計算済みデータを転送するという 強引な手法を使っていました。 下手をすると単なるデモで終わる可能性もあったのだと 思いますが、 きちんとゲームとして成立させた手腕は凄いと思います。 シルフィードは 斜め上から見た視点で作られているため 目の前に来るといきなり弾が早くなり、弾除けがしずらい欠点があるのですが 演出の上手さが欠点を補って余りあると思います。 メガＣＤで出来る表示の殆どを 背景に費やしているため、 自機及び雑魚のモデリングが非常に簡便になっているのは ご愛嬌なのでしょうか。 攻撃も非常に地味です。 その代わり、背景からの攻撃はド派手。 下手に中途半端なものを作るよりも、 背景に集中した一点集中型のゲームというのも 見所だと思います。 シルフィードはＰＣ８８版が初代で メガＣＤ版以降も色々な機種に続編が出ましたが メガＣＤ版が最強だと思います。 続編のＰＳ２，ＸＢＯＸ３６０版は別物で、 名前だけ借りたといってよいと思います。 メガＣＤほどの狂ったような作りこみが感じられず、 画面は綺麗なのですが何かが物足りない。 丹念に作られたゲームはやはり熱中するのだと 再認識した瞬間でした。

宮路氏の作ったゲームは ゲーム史に残る傑作が多数あると 考えています。 作品の作りこみに感動したいなら 宮路氏の作品を遊ぶのもアリだと思います。 宮路氏が関わっていないためか、 シルフィードの後継作品は、 いずれも期待を大きく下回る出来栄えでした。 メガＣＤ版はスペックが低いにも関わらず いかに時代を超越した作品として君臨していたかがわかります。 メガＣＤ版は非常にソフトの出回りが良いソフトです。 ＰＣエンジンＣＤ－ＲＯＭを持つ人の多くが天外魔境２を持っていたように メガＣＤのユーザーの殆どがシルフィードを保持していたのではないでしょうか。 とにかく、ハードに対するソフトの販売率が 高かったということは記憶しています。 シルフィードは評価が高い割に値段が安いのも 普及率と関係があると 考えられます。 決して、不満足な出来だから叩き売りされているわけでは ありません。コスパが非常に高いソフトともいえます。 このゲームは演出が凄いのです。 艦隊戦が印象的です。 銀河英雄伝説の戦闘シーンの中にいるかのような 迫力ある映像です。今見るとポリゴン数が少ないのですが、 それでも迫力は充分に感じます。 ポリゴン表示に弱いメガＣＤにして、 サターンすら見劣りしそうな迫力あるポリゴン宇宙を実装した 事実は称えるべきと思っています。 当時は、今でいうアンリアルエンジンのような 汎用的なツールがあるわけではなく、 ゼロから表示のためのライブラリを作らなければなりませんでした。 もちろん、シルフィードのような特殊な処理も ゼロから作ったわけで、このゲームのためだけに ゲームエンジンから作ったというのは 本当に凄いことだと思います。 技術力の高さと根気が桁違いだと感じました。 さらに、このゲームは処理済の頂点データをＣＤから流し込むということで 頂点データの作成も行わなければなりません。 まさに数字の羅列で膨大なデータです。 これを間違いなく、メガＣＤの読み込みの制約内で リアルタイムに流し込むというのは 素人目にも大変な作業だと思います。 （私はゲーム開発経験があるので素人ではないですが、大変であることは 事実だと思います。） 特殊ハードウェア搭載無しで ポリゴン世界をメガＣＤ上に実装。 これぞ技術力、といえる作品だと思います。 名作のコレクターなら揃えるべき１本だと思います。