無名メーカー時代からの経営で、 後に時代の寵児といわれるまでに成長した 名クリエイターが４２歳で死去しました。 飯野賢治氏です。 ブランド力が無いという圧倒的不利な状況から、 ゲーム業界で注目されるまでに至った手腕が凄いです。 プレイステーションエキスポにて サターン用エネミーゼロを発表したり、 ＰＳ版Ｄの食卓で、差し替えを求められたグロテスクな演出を 結局マスターロムでも使用したりと 武勇伝には事欠かない人でした。 エネミーゼロを発売したのが２６歳の時。 Ｄの食卓２が２９歳というから凄すぎます。 今、３０歳を越えた方、２６歳の頃と２９歳の時に 何をやっていましたか？ 私はこの年齢の時は完璧にユーザーとして ゲームばっかりやってました。たいした仕事は出来てないし 世の中の役に全く立っていませんでした。 飯野氏の作品は 本人の性格やら問題ある行動やらといった 固定観念を捨てて遊んでみると、 ゲームの完成度の高さが見えてきます。 飯野氏は作ったゲームが一般に訴える力を持っていて、 本人自身のプレゼン力、アピール力が素晴らしい。 作ったゲームも魅力的でした。 製作者が変わり者という先入観を捨てて この人の作品に触れることで、 ゲームの世界が広がるのではないかと思います。 サタコレ版エネミーゼロは 本編があまりにも難易度が高すぎた反省から ひっそりと低難易度バージョンも選べるのでお勧めです。 エネミーゼロは 敵に銃を撃つのに独特の操作のクセを 持っていました。 １発死というシステムから クソゲー扱いされることが多いゲームです。 セーブ回数やロード回数が予め決まっているという 縛りゲームでもあるので プレイにはかなりの気合が必要です。 前回プレイから日数があいてしまうと 次、どこへ行けばよいのかが全く分からなくなる 可能性があるため、プレイするなら 連日遊ぶ必要があるのだと思います。 このゲームに関しては、 ゲーム実況動画では怖さが伝わらない というのが私の解釈です。 ＰＣエンジンでサイレントデバッガーズという ゲームがありましたが、 あのゲームの３Ｄ版といってよい システムで、敵が見えません。 当時は敵が見えないというアイディアは 凄いと思っていました。 システムを流用しただけの続編が蔓延する中、 この人のオリジナリティ溢れる作品は まさに宝石のような輝きを放っています。 リアルサウンドなど、画面が全く表示されていません。 このリアルサウンドは飯野氏のオリジナリティの 極致だと思っています。 飯野氏はもっと評価されるべきでは ないかと思っています。 ゲームに芸術性を持ち込んだ 若き天才クリエイターの作品を 今こそ堪能してほしいと思っています。

エネミーゼロに関しては 難易度調整が雑であるとか、 難しすぎる　という欠点が よく言われています。 何度も同じムービーを見なければならない、という 苛立たしさを感じるかもしれません。 でも、それを差し引いても もう一度遊んでみたいと思わせる傑作だ というのが私の結論です。 このクオリティで、見えない敵と戦うゲームは 他に無いのですから。 （サイレントデバッガーズは似ていますが、やはり違います） セーブ・ロード回数制限アリとか タイムラグで ドスーンという音で閉じる扉の音。 こういう細かい恐怖の演出が 全体の印象を形作っているのだと思います。 エネミーゼロはとにかく 音楽が良いです。 マイケル・ナイマンという 有名な方を起用しているらしいのですが 当時２６歳ですよ！２６歳で 有名アーティスト雇えますか？ 私はエネミーゼロを完成させただけでも 凄いと思っています。 人間は見えない、分からないものに本能的に恐怖を覚えます。 幽霊も、見たことが無いし、見えないので怖いのです。 エネミーゼロは、ハードがどんなに進化しようとも 超えられない最強の敵を作り出したのではないかと 思います。未だに最凶と思われる凄いアイディアです。 飯野氏のリアルサウンドもアイディアが凄いです。 画面無しゲームの インパクトを超えるゲームは まだ現れていないのですね。 飯野氏はリアルサウンド２というゲームを ホラー物で企画していましたが 実現せずに終わりました。 このアイディアに近いものは セガのジョイポリスにて 「生き人形の間」というアトラクションで 体験できました。 「生き人形の間」の初期バージョンは音だけで 恐怖を感じさせられる内容なので 非常に怖いものでした。が、 「生き人形の間」はその後ＶＲ版として一新し、 ヘッドマウントディスクプレイにて 状況を見ることが出来るようになりました。 その結果、恐ろしさが急減しました。 自由に、状況が見えることになって、 怖いというより、ゲームみたいだな・・というような 粗まで見えてしまったのです。 見えない、ということがいかに 恐ろしいものなのか、ということを再認識しました。 最新のＶＲグラフィックを駆使しても 見えてしまうと恐ろしさが急減するのですから、 飯野氏は凄いアイディアを思いついたものです。 ジャケットやら色々な限定品を納めた２０万円の 限定版も独自性があって面白かった。 本人が直接出向いて手渡ししたというのだが アイディアが凄い。そして、それを実現してしまうことも 凄いと思います。 だって、２６歳ですよ！（くどいですが・・） ４２歳でなくなられたのは非常に惜しいと思います。 この作品と遺作となるＤの食卓２は 個人的にお勧めです。 （本当の遺作は音楽担当のセガラリー２ですが・・） また、本人は全く開発に関わっていないものの 飯野氏に似たキャラクタ登場の ゲームメーカー売れ売れ１００万本ゲットだぜ！も チェックしてみてください。